兄が死亡し、相続人として自分の他に連絡先も分からない甥姪がいたケース【遺産整理】
ここでは複雑な相続の事例として、連絡先の分からない相続人がいた相続の事例について解説します。
ご状況
①ご相談の背景
三人兄弟のTさん(女性)は、兄のSさんの相続のことでご相談に来られました。
Sさんは妻と子に先立たれ大阪で一人で暮らしていましたが、TさんはSさんのことを気にかけ、時々大阪を訪ねていました。
そのSさんがお亡くなりになり、Tさんが喪主となって葬儀も済ませましたが、その後の相続の手続をどうしたらいいかとのご相談でした。
②Sさんの相続人は誰に?
Sさんの両親は既に亡くなっていましたので、Sさんの相続人はSさんの兄弟姉妹ということになります。
Sさんの兄弟姉妹としては、妹のTさんの他にお兄さんがいますが、そのお兄さんは先に亡くなっていましたので、その子供(甥1人と姪1人)が相続人になります。つまり、Sさんの相続人は、Tさんと甥、姪の3人になります。
③遺産分割協議が進まない?
③Sさんは、生前Tさんに対し、Tさんのために遺言を書いておかないといけないねと言っていましたが、結局遺言を残すことなくお亡くなりになりました。
このような場合、Tさんは、Sさんの財産をどのように分けるか、甥姪と話し合い(遺産分割協議)をしなければなりません。
しかし、甥姪とはもともと疎遠であり、連絡先も分からない状況でした。Tさんとしては、自分ではどうしようもない状況でした。
司法書士の提案&お手伝い
①相続財産について
Sさんの財産としては、多額の預貯金と生命保険でした。
生命保険金は全てTさんが受取人でしたので、これは相続財産ではありません。
Tさんが保険会社の手続をすることで、保険金を受け取ることができます。
一方、預貯金は、相続人全員で遺産分割協議をしなければ解約等の手続をすることができません。
Tさんからは、遺産整理業務のご依頼を受け、相続の手続を進めることになりました。
②相続人調査・財産調査
戸籍謄本等を取得して、相続人の調査・特定を進めるとともに、預貯金の残高を調査しました。
その結果、相続人と相続財産が確定し、相続関係図と財産目録を作成しました。
これをもとに、甥姪との遺産分割協議を進めることになりました。
③相続財産の分け方
今までSさんのことを気遣い葬儀まで執り行ったTさんとしては、今回の相続についてはいろいろと思うところがあるようでした。
しかし、相続人の間でもめることは避けたいと思い、預貯金はきちんと法定相続分で分けてもよいとの考えでした。
その考えをもとに私の方でも甥姪の方に送る文書の文案を検討し、甥姪の方に遺産分割案を提案する文書を発送しました。
結果
①甥姪の方からは遺産分割案に同意するとの回答書が返送され、話がまとまるめどがついたのでTさんもほっと胸をなで下ろしました。
②そこで、私の方で正式な遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名捺印をもらいました。
その遺産分割協議書を使って各金融機関で預貯金の解約を行い、その現金を法定相続の割合で各相続人の口座に振り込んで、相続の手続が完了しました。
③他の相続人のことがよく分からない状況で相続の手続を進めるのは、大変不安が大きいものです。
場合によっては、相続人と連絡がとれないといったことがあるかもしれません。
そのような場合には、さらにいろいろな手続が必要になり、最悪の場合には手続を完了できないこともあります。
Tさんの場合は結果としてトラブルもなく手続を終えることができましたが、このような仕事を経験するたびに、亡くなった方が遺言さえ残しておいてくれたらと強く感じるところです。
遺言書の重要性や遺言書でできることについてはこちらのページをご覧ください
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この記事を担当した司法書士
福岡中央司法書士事務所
代表
森 浩一郎
- 保有資格
司法書士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託
- 経歴
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福岡中央司法書士事務所の代表を務める。平成11年2月に「福岡中央司法書士事務所」を開業。相続の相談件数約950件の経験から相談者の信頼も厚い。