遺言書がある場合の相続の流れと注意点【相続の専門家が解説】 | 福岡相続手続き相談センター
遺言書がある場合の相続手続きの流れ
相続が発生した際、遺言書が遺されているケースがあります。
遺言書は、被相続人が生前に財産の一覧や分け方の希望、遺された家族へのメッセージを記載したものです。
今回は遺言書がある場合の相続手続きの流れや注意点を解説します。
「自筆証書遺言」がある場合の相続手続き
自筆証書遺言を相続の手続に使用するためには、まず、家庭裁判所の「検認」という手続を行わなければなりません。
検認とは、遺言書を所持している人や発見した人が家庭裁判所に検認の申立書を提出し、それを受けて家庭裁判所が相続人の全員に通知を送り、指定された検認の日に、家庭裁判所で遺言書を相続人に開示するという手続です。
家庭裁判所への申立書を作成するにあたっては、まずは、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本等やそれぞれの相続人の戸籍謄本を取得して、相続人が誰であるかを確定しなければなりません。相続人の範囲が広い場合には、この作業に結構時間がかかります。
家庭裁判所に申立をした後に、検認の日が指定されるまでにさらに一定の期間がかかります。従って、検認が終わるまでにゆうに2~3か月を要することになります。
検認の手続により、家庭裁判所が自筆証書遺言に検認済であるという処理を施します。
この処理がなされて初めて、自筆証書遺言が各種の相続手続に使用できるようになります。
なぜこのような手続が必要かというと、家庭裁判所が関与して遺言書の存在を相続人の全員に知らしめることで、のちのちの遺言をめぐるトラブルを少なくしようということではないかと思います。
次に、相続の手続を進めるにあたり、自筆証書遺言が法的に有効か無効かを検討しなければなりません。
自筆証書遺言は、法律に従った形式で作成されていないと遺言そのものが無効になりますが、検認の手続は遺言が有効か無効かを判断するものではありません。
もし、遺言書が無効だった場合、検認を受けたとしても相続手続には使えないことになります。
幸いにして遺言書が有効だった場合、遺言書がない場合とは相続の手続が全く変わってきます。
自筆証書遺言が無効だった場合はどうなる?
遺言書が無効だった場合は、相続人の全員で遺産をどのように分けるかという話し合い(遺産分割協議)をしなければなりません。この話し合いでもめてしまうと、相続の手続ができないという結果にもなってしまいます。
一方、有効な遺言書がある場合は、各相続人の意向にかかわらず、その遺言書の内容に従って相続の手続を進めていくことができます。
遺言書とその他必要書類を関係機関に提出して、不動産の相続登記、預貯金の解約、株式等の有価証券の名義変更などを行います。
「遺言保管制度」の利用がおすすめ
ちなみに、自筆証書遺言であっても、「法務局の遺言書保管制度」を利用している場合は、検認の手続が不要になります。この制度も、今後、利用が増えてくるものと思われます。
「公正証書遺言」がある場合の相続手続き
公正証書遺言の場合は、自筆証書遺言で必要になる検認の手続が不要です。
従って公正証書遺言は、すぐに相続の手続に取りかかれます。
取得しなければならない戸籍も少なくて済むことが多く、手続の負担が軽くなることが多いものです。
また、公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が関与して作成されているため、遺言が無効となることは極めてまれだと思われます。
公正証書遺言の作成には公証人に支払う費用が必要ですが、自筆証書遺言と比べて法的に確実なものであり、また、相続手続における負担も少ないので、費用をかけるだけのメリットは十分あります。
なお、公証人は法的に確実な遺言書を作成してくれますが、立場上、遺言の細かい問題点まで踏み入ってアドバイスはしてくれません。自筆証書遺言のみならず公正証書遺言の作成の場合も、事前に司法書士や弁護士といった法律の専門家に相談されることを強くお勧めいたします。
公正証書遺言を使った相続の手続の方法は、自筆証書遺言と特に変わるところはありません。
遺言書の見本
上記は自筆遺言書の見本となります。
自筆遺言書の場合は、
・遺言者本人のが自筆で書く(財産目録は除く)
・財産目録を作成する
・相続財産ごとの相続人を正確に記載する
・日付を明記する
・署名する
・捺印する
ルールや書き方を守って作成する必要があり、ひとつでもミスがあると遺言内容が無効となる可能性があります。
遺言の執行者とは?
遺言書には、遺言執行者という人が決められていることがあります。
遺言執行者とは、遺言書の内容や法律の規定に従って相続の手続を行う人であり、遺言執行者が決められている場合は、その人に手続をお任せすることになります。
遺言執行者を決めておくことで、遺言書の内容を確実に実現することができます。
遺言執行者は法律に従って業務を行わなければならず、また法的な責任も重いので、できれば司法書士や弁護士といった法律の専門家を遺言執行者に指定しておく方が安心です。
遺言書がある場合の注意点~こんなケースはどうしたらいい?~
被相続人の作成した遺言書があったとしても、問題が発生することがあります。
・遺言書に記載のない財産があったケース
・遺言書の内容に納得がいかないケース
・遺言書が複数見つかったケース
上記のようなケースではどのように対応すべきか解説します。
遺言書に記載していない財産があった場合
遺言書に記載していない財産があった場合、その財産については通常の相続手続と同じになります。
つまり、相続人の全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、誰が取得するかを決めなければなりません。
それが遺言者の意向ならそれでよいのですが、単に記載を漏らしていたということであれば、せっかく遺言を作った意味が半減してしまいます。
遺言を作る際には、財産に漏れがないように注意する必要があります。
それでも全ての財産を網羅することは難しいことがありますので、遺言書に記載のない財産をどうするかについての条項を入れることも検討が必要です。
遺言書の内容に納得がいかない場合
相続人の立場によっては、遺言書の内容に納得がいかないといったことがあるかもしれません。
遺言書が作られた当時、遺言者は重たい認知症で遺言を作る判断能力がなかった、などといった場合は遺言の有効性を争う余地はありますが、その遺言が遺言者の真意に基づくものである場合、法的にはそれが最大限尊重され、何よりも遺言が優先します。遺言の内容によっては、特定の相続人が十分に財産をもらえないといった結果にもなります。
とはいえ、相続人には、遺留分という最低限守られた権利もあります。
遺留分とは、相続財産全体に対して決められた割合(法定相続分よりも少ない)の金銭を取得できる権利であり、多くの財産を取得した相続人等に対して、遺留分に相当する金銭を請求することができます。
遺言をもってしてもこの遺留分を排除することはできません。
逆に言えば、遺言書を作る際には、この遺留分への対策も考えておかないと、せっかく作った遺言が相続人間の争いの火種になるおそれがあります。
遺言書が複数見つかった場合
遺言書は、1通しか作れない訳ではありません。何通でも作れますし、状況の変化に応じて書き直しもできます。
しかし、複数の遺言書があると、どの遺言書に従えばよいのか判断が難しくなる場合もあるでしょう。では、実際にはどのように判断されることになるのでしょうか。
法律では、あとに作った遺言が優先することになります。
前に作った遺言書とあとに作った遺言書の内容に抵触する部分があるときは、その部分については、あとに作った遺言で前に作った遺言を撤回したことになります。
そのため、遺言書の日付は重要です。
自筆証書遺言で日付がないと無効になるのは、そういった理由もあるでしょう。
公正証書遺言では、当然日付は入ります。
あとに作った遺言書が優先するとはいえ、複数の遺言書がある場合は遺言者の意向の判断が難しくなる場合もあります。
遺言書の追加や書き直しを行う場合には、そういった問題が生じないか十分な検討が必要です。
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この記事を担当した司法書士
福岡中央司法書士事務所
代表
森 浩一郎
- 保有資格
司法書士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託
- 経歴
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福岡中央司法書士事務所の代表を務める。平成11年2月に「福岡中央司法書士事務所」を開業。相続の相談件数約950件の経験から相談者の信頼も厚い。
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