【解決事例あり】海外在住の相続人がいた場合の相続手続きと必要書類を解説 | 福岡相続手続き相談センター
お仕事やご結婚により、海外にお住まいの日本人も多くいます。
海外在住中に相続が発生した場合、遺産分割や相続手続きに違いはあるのでしょうか。
本記事では海外在住の相続人が相続で必要な書類や、注意点を専門家が解説をします。
また、当事務所が実際に解決した事例もご紹介します。
相続人が海外に居住していても相続手続きはできる?
海外にお住まいの相続人も、もちろん被相続人の財産を相続することができます。
通常家族が死亡したときには、土地や建物、預金、保険などの遺産を相続します。
遺産の相続では、以下の点を確定して手続きを行います。
・ 相続させる人(相続の相手)
・ 相続させる財産の内容
・ 相続させる金額
これらの事項は、遺言で指定されている場合もあります。しかし、実際には遺言が用意されていないケースが多いため、ほとんどの場合は相続人同士で「遺産分割協議」をする必要があります。
ここで、抑えておくべきポイントがあります。
1つ目は、海外在住の相続人も必ず相続手続をする必要があるということです。
一般的に、相続が発生すると、どのように財産を分割するかを相続人同士で話し合う遺産分割協議が行われます。
遺産分割協議は、「相続人全員が参加し、内容に同意をすること」が大前提になります。
1人でも参加しない相続人がいた場合は無効になってしまいますので注意しましょう。
日本にいらっしゃる他の相続人や専門家の協力があれば、一度も帰国せずに遺産分割と手続きを終えることができます。
2つ目は、必要な書類が日本にお住まいの方とは異なるということです。
以下で、海外在住の相続人が準備しなければならない書類について詳しく解説していきます。
海外在住の相続人における遺産分割時の必要書類
相続人の中に海外居住者がいる場合でも、相続手続きの流れに大きな違いはありません。
気を付けるべきことは、海外在住者には実印と印鑑証明書が無いということです。
相続手続には必ず相続人の実印と印鑑証明書が必要になりますが、日本に住所登録をしておらず海外に居住している相続人には、印鑑証明書が発行されません。
そのため、これらに代わる証明書を準備する必要があります。
①署名証明書(サイン証明書)
▲署名証明書(在日ロサンゼルス領事館発行)
日本での印鑑証明書に代わるものとして、本人の署名及び拇印であることを証明する署名証明書(サイン証明書)を現地の日本領事館等で発行してもらいます。
署名証明書とは、「日本に住民登録をしていない海外に在留している方に対し,日本の印鑑証明に代わるものとして日本での手続きのために発給されるもので,申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するもの」(外務省のHPより)であり、申請者自身が在住地の日本領事館等の公館(領事館など)に足を運び、申請しなければならないとされています。
遺産分割協議書を領事館に持っていき、領事の目の前で遺産分割協議書にサインをし、それを領事に証明してもらうというやり方が多いです。
また日本に一時帰国している場合には、日本の公証役場で署名証明書を取得することもできます。
本人確認資料として、①パスポート、②海外の住所がわかるもの(在留証明や免許証等)を持参のうえ、公証人の目の前で持参書類(契約書、遺産分割協議書、委任状等)に自分で署名することで、それらの書類に本人が自筆で署名したという「サイン証明」を作成することができます。
このサイン証明は日本における印鑑証明書と同じ、公的な証明書類として扱われます。
ただしこのサイン証明した遺産分割協議書を使用して不動産の相続登記手続きをする際には注意が必要です!
というのも、その海外に居住している人が不動産の相続人になる場合には、登記手続きの過程で住所を証明する書面が必要であり、つまり居住地の領事館で「在留証明書」を取得しなければならないからです。
したがって、日本に一時帰国する前に、海外の居住地における領事館で予め「在留証明書」を取得しておく方が望ましいでしょう。
②在留証明書
▲在留証明書(在アメリカ合衆国大使館発行)
遺産分割協議の結果として不動産を相続する場合は住民票も必要になりますが、海外在住の場合は住民票という制度がない国が大半です。
そのため、住民票に代わる在留証明書の発行が必要になります。
在留証明書を受けるには、以下の要件が必要となります。
・日本国籍を有している |
発行を受けるときは、パスポートのほか、賃貸契約書や公共料金の請求書など滞在期間と居住地がわかるものを持参します。
領事館によっては永住ビザや現地の運転免許証(ドライバーズライセンス)でも受け付けてくれますが、事前に確認すると確実でしょう。
なお、在留証明書の申請方法・手数料・必要書類など詳細については、証明を受けようとする在外公館に直接お問合わせください。
③(海外の国籍を有している場合)相続証明書
他国でそのまま外国籍を取得した方がいらっしゃる場合もあります。
このようなケースでは、準備する書類に違いがでてきます。
通常、相続手続において、相続人であることを確認するために「戸籍謄本」の提出が必要になる場合が多いです。
しかし、外国籍の方の場合は、日本に国籍がありませんので取得することができません。
そこで、この戸籍謄本の代わりとなるものが「相続証明書」になります。
便宜上「相続証明書」と呼ばれることが多いですが、相続証明書という名前の書類というわけではありません。
一般的には、出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書などが相続証明書に該当します。
海外在住者の遺産分割・相続手続における注意点
相続人の中に海外在住の方がいらっしゃった場合、遺産分割や相続手続きでご注意いただきたいことがあります。
①海外在住の相続人も日本の相続税申告が必要
日本の被相続人からの遺産を受け取った場合、海外に在住している相続人についても日本の相続税が課され、税申告が必要となります。
被相続人が保有していた財産であれば、原則日本国内の財産に限らず、海外の財産についても課税対象となります。
ただし、被相続人と相続人の双方が十年以上海外に在住している場合、被相続人の日本国内の財産のみ課税対象となり、海外の財産については対象になりません。
②遺産分割の話し合いの機会が設けにくい
相続人皆様が日本であれば、遠方であっても、直接会って遺産分割や相続手続きについて話し合うということをしやすいです。
本来であれば、直接会って対面で遺産分割の話し合いを行うほうがよいかもしれませんが、海外にお住まいとなるとすぐに帰国することが難しい方もいらっしゃいます。
海外在住の相続人の帰国を待っていては相続手続きが滞ることもありえます。
速やかに遺産分割と相続手続きの完了させるためには、テレビ電話で連絡をとるのがおすすめです。
また、日本との時差によってなかなか話し合いの場を設けることが難しいかもしれませんが、手続きには期限がありますから、早めに話し合いをしましょう。
③書類の準備とやりとりに時間がかかる
相続人の中に海外在住の方がいらっしゃった場合、書類の準備とやりとりには注意をしてください。
まず海外在住の方は書類を用意する必要があります。日本とは準備する書類が異なることを知らずに取得が遅れてしまうことも。
そして、国外への書類の発送はやはり時間や手間がかかります。
そこで、海外在住の相続人に署名捺印をしてほしい書類は、PDFデータで送付して対応してもらうのがいいでしょう。
スピーディーにやりとりができるように、国際郵便でのやりとりの回数を減らす工夫ができるといいですね。
④遺産分割後のお金の振り込みが必要
遺産分割と相続手続きの後は、被相続人の財産を、相続人で分配します。
海外在住の相続人がいた場合、預貯金は海外送金という手段があります。
ただし、海外送金は手数料が高く、手間もかかります。
もちろん海外送金で問題ありませんが、お金の振り込み方法、財産の分け方を工夫すると負担が少なくて済みます。
日本国内に銀行口座に振り込み
海外在住の相続人が、日本国内の銀行口座を開設しているか確認しましょう。
もしも日本国内の銀行口座をお持ちであれば、その口座に振り込みをすれば完了です。
ほとんどのケースはこれで解決できるとことが多いです。
日本に住む家族に代理受領をしてもらう
転勤等で海外にお住まいの相続人は、日本国内に家族を残されていることがあります。
相続人自身に国内の口座がなければ、他の家族の銀行口座へ送金する代理受領も可能です。トラブルを避けるためにも、代理受領に関する書面を残しておくようにしましょう。
預貯金以外を相続
海外送金の手間を回避するために、海外在住の相続人には預貯金以外の財産を相続してもらう方法があります。
海外在住であっても日本の不動産を相続することは可能です。
【解決事例】海外に在住している相続人がいるケース
当事務所が解決した、海外に在住している相続人がいるケースをご紹介します。
ご状況
Kさんは、母親の相続手続のことで相談に来られました。
相続人としては、Kさんと弟さんの2人でした。
弟は事業のため中国に長期にわたって滞在しており、日本に住所はなく、印鑑証明書の発行を受けることができませんでした。
メール等のやりとりで遺産の分け方については話がまとまっていました。
お悩み
弟さんは印鑑証明書の発行を受けられないので、遺産分割協議書に実印を押すということができないこと。
相続の手続きが自分たちでは難しそうだということ。
解決方法
このようなケースには、中国の現地の日本領事館での手続が必要になります。
遺産分割協議書を中国の弟さんのところに送付し、弟さんが中国の領事館の担当者の面前で遺産分割協議書に署名し、それが本人の署名に間違いないとの認証をしてもらいます。
この認証手続を行うことで、実印と印鑑証明書がなくても相続の手続を行うことができます。
また、領事館では、在留証明書も取得してもらいました。
以上の手続により、全ての名義変更の手続きを問題なく行うことができました。
相続に関する無料相談を実施!
遺言や相続に関する不安・悩みをお持ちの方に向けて、当事務所では無料相談を実施しています。
「海外在住の相続人がいる」「自分たちで遺産分割や相続手続きをする自信がない」といった方は是非一度お越しください。
丁寧・安心をモットーにした専任のスタッフがご相談内容をお伺いさせていただきます。
予約受付専用ダイヤルは092-761-5030になります。お気軽にご相談ください。
当事務所にご依頼いただいたお客様の声
当事務所にご依頼いただいたお客様の声を一部ご紹介します。
A様(詳細はこちら) 「とても良く説明していただいて理解しやすい事がうれしかった。 |
B様(詳細はこちら) 「司法書士事務所へおとずれるのは初めてで、緊張しましたが、森先生はとてもお話がしやすく、安心してお任せできると思いました。」 |
C様(詳細はこちら) 「他の司法書士事務所は料金体系があいまいなことが多いのですが、細かくプランなどがあり、分かりやすかったのでお伺いすることにしました。 |
相続手続きは、人によって状況も違い、進めていく中でわからないことも多く出てきます。
専門家にお任せしていただくと、相続に関わるご不安を全て解消させていただきます。
相続手続きでお悩みの方は、一度お気軽にご相談ください。
当事務所の遺産分割サポート
当事務所にご依頼いただければ、相続人の調査から遺産分割協議書の作成、およびその受け渡しを、全てサポートいたしますから、慣れない手続きや書類の準備・作成に振り回されることなく、故人を悼む日々を過ごすことができます。
ややもすれば感情的になりがちな遺産分割についても、冷静にかつ円満に解決できるよう、第三者である専門家が法的なアドバイスを行います。相続をきっかけにして、相続人どうしがいがみ合う、いわゆる「争族」にならないように、知恵と知識と経験でサポートさせていただきます。
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この記事を担当した司法書士
福岡中央司法書士事務所
代表
森 浩一郎
- 保有資格
司法書士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託
- 経歴
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福岡中央司法書士事務所の代表を務める。平成11年2月に「福岡中央司法書士事務所」を開業。相続の相談件数約950件の経験から相談者の信頼も厚い。