腹違いの兄弟(異母兄弟)の相続の注意点とは?【相続専門司法書士が解説!】 | 福岡相続手続き相談センター
「うちは兄弟仲が悪くないから大丈夫」そう思っていても、親が亡くなった後、子どもたちが集まって遺産相続について話し合うタイミングで、異母兄弟がいることが発覚するケースもあります。
そうした場合、子どもたちは異母兄弟に対し「これまで付き合いがなかったのに・・・」と思い、異母兄弟は「同じ親の子どもなのだから、親の遺産を受け取る権利がある!」といった気持ちになることがあります。
遺産相続をきっかけに対立的な関係になる恐れもあるでしょう。互いに感情的になって話し合いが難航することもあります。
この記事では、相続人に異母兄弟がいる場合の遺産分割協議で注意したい点を解説していきます。
目次
腹違いの兄弟(異母兄弟)とは
腹違いの兄弟とは、母親が異なる兄弟のことをいいます。
たとえば、被相続人(=亡くなられた方)である父親に離婚歴があり、前妻との間に子どもがいた場合、前妻との間の子から見て後妻の子は腹違いの兄妹(異母兄弟)となります。
異母兄弟や異父兄弟がいる親族環境では、親や兄弟姉妹が亡くなって遺産相続の話になった際、互いの権利を主張し合いなかなか話が進まないことがあり得るため、事前に準備しておくことが大切です。
腹違いの兄弟、相続権はどうなる?
腹違いの兄弟がいる場合、腹違いの兄弟にも相続権が生じます。
しかし、「親との関係で相続する場合」と「兄弟間で相続する場合」とでは、相続分配が異なるので注意が必要です。
【親の遺産を腹違いの兄弟で相続するケース】
腹違いの兄弟にも死亡したときの家族の子どもと同等の相続分があります
【兄弟・姉妹の遺産を腹違いの兄弟と相続するケース】
腹違い・父親違いの相続人は、親が同じ相続人の半分となります
※子どもがいなくて両親が死亡している場合、兄弟が相続人となる
それぞれどのようなことを示しているのか、具体的に見ていきます。
親の遺産を腹違いの兄弟で相続するケース
親の遺産を異母兄弟とともに相続する場合、異母兄弟Aは「死亡時の家族の子どもB・C」と同等の相続権を持っています。
父親が亡くなった場合、その子(AとB・C)は異母兄弟の関係となり、相続においてA・B・C全員に対して等しい相続分があります。
法的な相続の割合では妻の相続分が2分の1、子ども3人分の相続分が合わせて2分の1となり、A・B・Cはそれぞれ6分の1ずつ(2分の1×3分の1)父親の遺産を相続することが可能です。
たとえば父親の遺産総額が6,000万円だった場合、母親には、3,000万円が相続分配され、3人の子どもはそれぞれ1,000万円ずつを受け取ることとなります。
Aの母親である前妻は離婚しているため、相続の権利はありません。
兄弟・姉妹の遺産を腹違いの兄弟と相続するケース
死亡した人に子どもや両親、祖父母がいないケースでは、兄弟姉妹が相続権を持ちます。
配偶者がいた場合には、配偶者と同様に相続する権利があるのです。
異母兄弟にも相続権はありますが、その相続分は父親が同じ兄弟姉妹の半分の分配となります。
AとBの兄弟と、異母兄弟Cのケースで考えてみましょう。
仮に子Cが亡くなったとき、父親が同じBと異母兄弟のAが相続権を持つことになります。
この際、異母兄弟Aの相続分はBの2分の1となり、父親が同じ兄弟であるBは3分の2、Aが3分の1を相続することができます。
具体的な数字で表すと、Cの遺産総額が6,000万円の場合、父親が同じBには4,000万円(3分の2)が分配され、異母兄弟のAには2,000万円(3分の1)が分配されるという計算になります。
Aに配偶者がいた場合、配偶者の法定相続分は4分の3(12分の9)となります。Bの法定相続分が12分の2、Aの法定相続分は12分の1です。
このように、異母兄弟にも相続権は発生しますが、親が亡くなった場合と兄弟が亡くなった場合、兄弟に配偶者がいる場合で相続分の割合が異なるため、注意が必要です。
腹違いの兄弟との遺産分割協議で起こり得るトラブル
もしも親が死亡したときに遺言書が存在しなければ、異母兄弟との間で遺産分割協議を行う必要があります。
その場合、下記のようなトラブルが起きやすくなるため注意しましょう。
異母兄弟の調査が大変
特に、これまで面識がない場合、異母兄弟の調査は手間がかかります。
異母兄弟の連絡先や現住所を調査するためには、まず、相手とやり取りのあるかもしれない親戚にコンタクトをとってみましょう。
親戚から調べるのが一番手っ取り早い調査方法ですが、それでわからなかった際は戸籍を確認してみてください。亡くなった親の戸籍を手掛かりとして、異母兄弟の氏名や住所が記載してある戸籍の附票を取り寄せましょう。
戸籍の附票は本人以外に、配偶者と直系血族(祖父母・父母・子・孫等)であれば請求できます。具体的な手順がわからない場合には、相続の専門家に相談することをおすすめします。
法定相続分の計算が難しい
異母兄弟との法定相続分の計算は、難しくなる場合があります。
繰り返しになりますが、亡くなった親が異母兄弟を実子として認知していれば、異母兄弟には兄弟と同等の法定相続分があり、認知がない場合は法定相続分がありません。
しかし、相続人の範囲や法定相続分の割合などは、被相続人の構成ごとで複雑に変動します。トラブルを避けるためにも、法定相続分の計算については専門家に相談しましょう。
どちらも譲らず問題が長期化しやすい
遺産相続は、被相続人同士が条件を譲らずに長期化する場合があります。
亡くなった親と長く付き合いのあった子どもにとっては、それまでに面識がなかった人に遺産を分けるのは抵抗があるでしょう。
一方で、異母兄弟にとってはさまざまな経緯から、亡くなった親に対して不満を抱いている場合もあるかと思います。そのためトラブルが長期化しやすい傾向にあるのです。
腹違いの兄弟が相続人になる場合にやるべきこと
相続人となる異母兄弟の存在がわかったら、被相続人が死亡した時点での家族と異母兄弟で協議して、遺産分割の中身を決定しなければなりません。
また、預貯金の解約や不動産の名義変更等の相続手続きには、相続人すべての合意が必要です。
お互いに面識がある場合や、手紙や電話・メールなどでコンタクトを取れる場合には、相続の発生が分かった時点で、被相続人が亡くなった事実を伝えておくとスムーズに進められることが多いです。
しかし、相続が発生するまで異母兄弟の存在を知らなかった場合には、見ず知らずの異母兄弟との相続は感情が先だってしまいやすく話し合いが進みにくいことがあります。
遺産分割調停や長期裁判で争うリスクを避けるためにも、次の対応を徹底しておくと安心です。
相続関係を明確にする
まずは、誰が相続人になるのかを把握しておくことが大切です。
異母兄弟や異父兄弟は、親の戸籍謄本を取り寄せれば調べることができます。親が生まれてから死亡するまでの全ての戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本を取り寄せてから前妻の子どもや認知された子どもがいないか、確認しましょう。
親が健在であれば、親自身で申請して取得してもらいましょう。
死亡後であれば、相続人が申請できます。遠方であれば、郵送による取得も可能です。
トラブルを防ぐために遺言作成が有効
兄弟間の相続トラブルを避けるよう事前に取り計らえるのは、ほかならぬ親だけです。
ご自身の子と異母兄弟となる子が生まれた、あるいは認知したタイミングで、速やかに「遺言書」を作ることをおすすめします。
遺言書がない場合、死亡後に相続人が出揃って遺産分割協議を実施しなければなりません。遺産分割協議で双方の合意が取れなければ相続争いに発展する恐れもあります。
遺言書によって「誰に、何を、どれくらい」相続させるのか具体的に示していれば、そもそも相続人たちが遺産分割協議を行う必要がありません。
現在の配偶者とその子ども、同じ両親を持つ兄弟姉妹に対して、家や預貯金などの遺産を渡す旨の遺言書を作りましょう。
遺言はどのように書くかによって、効力が違ってきます。必要事項はもちろんのこと、心配であれば、司法書士などの相続のエキスパートに相談するのが無難です。
当相談室でも遺言コンサルティングサポートがありますので、お困りの際はご相談ください。
遺言書作成の場合に「遺留分」に注意
遺留分の侵害に注意
遺言では、遺産の最低限の取り分である「遺留分」を侵害しないよう注意してください。
父が亡くなって異母兄弟が相続する場合は、異母兄弟はそれぞれ子として父を相続するので、遺留分が保障されています。
一方、異母兄弟の1人が亡くなって兄弟姉妹が相続する場合は、兄弟姉妹に遺留分はないため、法律上は問題ありません。
遺言書は自筆で作成することができますが、その内容・文章については専門家に依頼するか、公証役場での公正証書遺言を利用することが確実で安心でしょう。
異母兄弟がいるケースの遺産分割協議を成功させるには
異母兄弟・異父兄弟がいるときには、通常より慎重な遺産相続対策を立てる必要があります。
「うちには相続する遺産なんてないから、トラブルにならない」と思う方も多くいらっしゃいます。
しかし、預貯金以外の所有物や不動産なども見直してみると、非常に多くの人に関わってくる問題です。
相続の発生がきっかけで家族同士で争いになってしまうことを防ぐために、自分達だけで解決しようとせず、専門家に相談しましょう。
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相続手続きや遺言書作成、成年後見など相続に関わるご相談は当事務所にお任せください。
当事務所の司法書士が、親切丁寧にご相談に対応させていただきますので、まずは無料相談をご利用ください。
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当事務所で腹違いの兄弟がいた相続問題を解決した事例
当事務所では、腹違いの兄弟がいた相続手続きをご依頼いただく場合も少なくありません。
実際にどのようなご状況をどのように解決できたか、2つの事例をご紹介します。
事例①亡くなった父に他に子どもがいたことが分かったケース
【状況】
Kさんは、父親が交通事故でお亡くなりになり、自分で相続の手続きを進めていました。
Kさんは、相続人は自分一人だと思っていましたが、手続きを行っていた銀行から他にもう一人相続人がいることを指摘されました。
相続手続きをどのように進めたらよいのか分からなくなり、事務所に相談に来られました。
戸籍をたどったところ、Kさんのお父さんは2度の結婚歴があり、最初の結婚で女の子(Fさん)が生まれましたが、結婚から1年足らずで離婚していました。
Kさんは、そのことを両親から全く知らされないまま、突然のお父さんのお亡くなりを迎えていたのでした。
【当事務所のご提案・お手伝いの内容】
今回の相続手続にあたって、Kさんは腹違いの姉であるFさんと遺産分割協議をしなければなりません。
そして、遺産分割協議書にFさんの実印の押印と印鑑証明書が必要になります。
相続財産としては、自宅の不動産といくつかの預貯金がありました。
それらの手続きを全て当事務所で行うことになり、遺産整理手続きとしてご依頼を受けることになりました。
【結果】
手順①相続人の確定とお姉さんへのお手紙送付
当事務所で再度戸籍の収集から始めました。
相続人としては、KさんとFさんの二人ということが確定しました。
ただ、KさんもいままでFさんとは全く連絡をとったことがないため、どのような方かもよく分かりません。
そこで、当事務所で文案を作成し、KさんからFさんに対して、お父さんが亡くなったことの報告と遺産分割に関するFさんの意向を確認する手紙を送りました。
Fさんの返答は、遺産は全て放棄したいというものでした。
手順②遺産分割協議書の作成と相続手続き
そこで、当事務所で財産は全てKさんが取得するとの内容での遺産分割協議書を作成し、Fさんからはそれに実印の押印をしてもらい、印鑑証明書とともに返送してもらうことができました。
その遺産分割協議書を元に、不動産と銀行の手続きは全て無事完了しました。
Kさんは、父親に自分以外にも子どもがいることを知ったときには、どうなることかととても戸惑われたことと思います。
幸い、全くもめることなくスムーズに遺産分割協議ができました。金額は分かりませんが、KさんはFさんにある程度の金額の御礼をされたとのことでした。
事例②亡くなった父が3回結婚していたケース
【状況】
Fさんのお父さんは20年以上前に亡くなりましたが、お父さん名義の自宅は相続登記をしないままになっていました。
今回、それを何とかしておきたいということで相談に来られました。
お話をお伺いするとFさんのお父さんは過去3回結婚していました。
最初の妻との間の子どもがMさん、2人目の妻との間の子どもがFさんとFさんの妹Rさん、3人目の妻Aさんとの間には子どもはいませんでした。
FさんとRさんは、義母であるAさんと養子縁組していませんでした。
Aさんは2年前に亡くなりましたが、幸いなことに、Aさんは、財産は全てFさんに遺贈するとの公正証書遺言を残していました。
Fさんのお父さんの相続人としては、妻の亡Aさん、Mさん、Fさん、Rさん、の4人でした。
Fさんは、過去にMさんと連絡をとったことはあるが現在は音信不通なので、今回の相続手続で協力してくれるかどうか分からないので不安だとのことでした。
【当事務所のご提案・お手伝いの内容】
対象となる相続財産としては、お父さんの自宅不動産だけでしたが、相続関係が複雑でしたので、戸籍の調査による相続人の確定に始まり、相続人間の遺産分割の話をまとめるサポートをすることになり、遺産整理業務として依頼を受けることになりました。
相続人の一人であるAさんはすでに亡くなっていましたが、公正証書遺言を残していましたので、それに基づき、Aさんが相続した持分については、Fさんが遺贈で取得する内容の登記手続もあわせて行うことになりました。
【結果】
戸籍の調査によりMさんの現住所が分かりましたので、今回の遺産分割についてのMさんの意向を尋ねる文書を作成し発送しました。
それに対しMさんは、法定相続分にあたる財産の取得を希望するとの回答でした。
そこで、唯一の相続財産である自宅不動産の評価額を決定し、そこから今までFさんが負担してきた固定資産税等の出費の合計額を差し引き、その金額に対するMさんの法定相続分を算出し、それを現金で支払う内容での提案をMさんに対し行いました。
Mさんからは、それに応じるとの回答がありました。
Fさんには、Mさんに対して支払う現金の準備をしてもらい、遺産分割協議書に署名押印してもらう日程を設定しました。
当日は問題なく、現金の支払いと遺産分割協議書への署名捺印がなされました。
無事、遺産分割協議書の捺印、印鑑証明書の取得が完了しましたので、それと合わせて義母Aさんの遺言書を使用して、自宅不動産の名義をFさんに移転する手続きが完了しました。
Fさんにとって現金の準備は負担が大きかったようですが、今まで気になっていた相続の手続きが無事完了して、胸をなで下ろされたようでした。
当事務所にご依頼いただいたお客様の声
当事務所にご依頼いただいたお客様の声を一部ご紹介します。
A様(詳細はこちら) 「とても良く説明していただいて理解しやすい事がうれしかった。 |
B様(詳細はこちら) 「司法書士事務所へおとずれるのは初めてで、緊張しましたが、森先生はとてもお話がしやすく、安心してお任せできると思いました。」 |
C様(詳細はこちら) 「他の司法書士事務所は料金体系があいまいなことが多いのですが、細かくプランなどがあり、分かりやすかったのでお伺いすることにしました。 |
相続手続きは、人によって状況も違い、進めていく中でわからないことも多く出てきます。
専門家にお任せしていただくと、相続に関わるご不安を全て解消させていただきます。
相続手続きでお悩みの方は、一度お気軽にご相談ください。
お問合せ方法
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この記事を担当した司法書士
福岡中央司法書士事務所
代表
森 浩一郎
- 保有資格
司法書士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託
- 経歴
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福岡中央司法書士事務所の代表を務める。平成11年2月に「福岡中央司法書士事務所」を開業。相続の相談件数約950件の経験から相談者の信頼も厚い。