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父の相続で母が認知症だった場合の解決策|成年後見制度と遺産整理の進め方

ご家族が亡くなった後、悲しみに暮れる間もなく始まるのが相続手続きです。しかし、相続人の中に「認知症」を患っている方がいる場合、通常の手続きとは異なる高いハードルが立ちはだかります。

「母はグループホームに入っていて、もう難しい話はわからない。子供たちだけで遺産を分けてもいいのだろうか?」

「銀行に行ったら『お母様の意思確認ができないと手続きが進められない』と言われてしまった……」

このような悩みを抱える方は決して少なくありません。

超高齢社会において、認知症の相続人が関わるケースは今や「当たり前」の課題となっています。本記事では、当事務所がサポートした実際の事例をベースに、司法書士がどのような提案を行い、どのように円満な相続を実現したのか、実務の裏側まで踏み込んで解説します。

1. 事例:施設入所中の母と、突然訪れた父の相続

家族構成と背景

相談者のNさん(50代・女性)は、3人兄弟の長女です。

両親はもともと自宅で二人暮らしをしていましたが、数年前からお母様に認知症の症状が出始めました。お父様が献身的に在宅介護を続けていましたが、お父様自身も高齢となり、共倒れのリスクが出てきたため、子供たちの勧めで両親揃ってグループホームへ入所することになりました。

一安心したのも束の間、入居から数ヶ月後、お父様が急逝されました。

相続財産の内容

お父様が遺した財産は以下の通りです。

  • 自宅不動産(土地・建物)

  • 複数の銀行口座の預貯金

  • 長年運用していた株式

直面した問題点

  1. 遺産分割協議ができない: 相続人は母と子供3人の計4名。全員の合意が必要ですが、お母様は判断能力が低下しており、協議の内容を理解して署名・捺印をすることができません。
  2. 銀行口座の凍結: お父様の口座から葬儀費用や施設代を引き出そうにも、銀行は「相続人全員の同意」を求めます。
  3. 遠方の壁: Nさんを含む子供たちは全員遠方に住んでおり、平日に何度も役所や銀行、裁判所へ足を運ぶことが物理的に困難でした。

2. 司法書士が解説!「認知症の相続人」がいると手続きが止まる理由

なぜ、お母様が認知症だと手続きが進まないのでしょうか。そこには法律上の厳格なルールがあります。

意思能力のない合意は「無効」

遺産分割協議は、一種の契約です。自分にどのような権利があり、どの財産をどれだけ受け取るのかを理解する「意思能力」がなければ、その合意は法的に無効となります。もし、無理に書類を作って進めたとしても、後から他の親族や債権者から無効を訴えられるリスクがあります。

銀行・法務局のコンプライアンス

近年、金融機関や法務局(登記所)では本人確認が非常に厳格化されています。

窓口での受け答えが曖昧だったり、施設に入っていて本人の署名がもらえなかったりする場合、「成年後見人を立ててください」と案内されるのが一般的です。

これは金融機関が後々のトラブル(親族間の使い込みの疑いなど)を回避するための防衛策でもあります。

勝手に除外することはできない

「母はもうお金を使わないから、子供たちだけで分けていいよね」という考えは通用しません。

たとえ認知症であっても、お母様には「配偶者」として2分の1の法定相続分を受け取る権利があります。これを除外して作成した遺産分割協議書は受理されません。

3. 解決の鍵「成年後見制度」の活用

当事務所がNさんに最初にご提案したのは、家庭裁判所へ「成年後見人」の選任を申し立てることでした。

成年後見制度とは?

認知症などで判断能力が不十分になった方に代わり、家庭裁判所から選ばれた「成年後見人」が、預貯金の管理や契約行為を行う制度です。

今回のケースで成年後見人が果たした役割

  • 遺産分割協議への参加: お母様に代わって、Nさんたち子供と「どのように遺産を分けるか」を話し合います。
  • 財産管理: お父様の遺産からお母様が受け取った分を、適切に管理し、施設費用の支払いや医療費に充てます。
  • 身上保護: お母様の生活状況を把握し、必要な介護サービスの契約更新などを行います。

成年後見人の選任プロセス

  1. 申立準備: 本人の診断書、戸籍、財産目録などを用意します。
  2. 家庭裁判所への申立: Nさんの地元の裁判所ではなく、お母様の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。
  3. 調査・審問: 裁判所の調査官が事情を確認します。
  4. 選任: 裁判所が最も適任と思われる人を後見人に選びます。

4. 専門家が教える「誰が後見人になるのか?」の現実

Nさんは当初、「私が母の後見人になりたい」と希望されていました。しかし、実際には地元の司法書士が選任されました。なぜでしょうか。

裁判所が「専門家」を選ぶケース

最近の傾向として、以下のような場合は親族ではなく司法書士や弁護士などの専門職が選ばれる可能性が高くなります。

  • 管理すべき財産額が多い(預貯金が高額、不動産が複数あるなど)

  • 親族間で意見の対立が予想される

  • 今回のように「遺産分割協議」を目的としている

今回のケースでは、お父様の遺産額がそれなりにあり、かつ「後見人(Nさん)」と「相続人(Nさん)」という、利益が相反する関係(利益相反)になる可能性があったため、中立な専門家である司法書士が選ばれました。

利益相反(りえきそうはん)とは

例えば、Nさんがお母様の後見人になった場合、「お母様の取り分を減らして、自分の取り分を増やす」ということが物理的にできてしまいます。

お母様の権利を守る立場(後見人)と、自分の利益を追う立場(相続人)が同一人物になってしまうため、このような場合は別途「特別代理人」を立てるか、最初から第三者の専門家を後見人に選ぶ必要があるのです。

5. 遺産整理業務による一括サポート

成年後見の手続きと並行して、当事務所では「遺産整理業務」を実施しました。これは、お父様の財産をすべて調査し、各相続人へ適切に配分する手続きを司法書士が代行するものです。

財産調査と目録の作成

お父様名義の銀行口座をすべて洗い出し、残高証明書を取得しました。また、自宅の不動産については固定資産評価額を確認し、相続登記(名義変更)のための書類を準備しました。

遺産分割協議の調整

成年後見人となった司法書士と、子供たち3名との間で協議を行いました。ここで重要な実務上のポイントがあります。

「裁判所は、本人が法定相続分以上の財産を確保することを強く求める」という点です。

「母は施設にいるからお金は不要」という主張は、後見制度の場では通りません。

お母様の今後の生活を守るため、現金を優先的にお母様が相続し、不動産を子供たちが相続するといった、バランスの取れた協議案を司法書士が提示し、全員の合意を得ました。

家庭裁判所の許可と手続き完了

まとまった遺産分割協議案を家庭裁判所に報告し、許可を得た上で、銀行の解約手続きや不動産の名義変更を一気に進めました。

Nさんたちは一度も平日に銀行や役所に行くことなく、すべての手続きが完了しました。

6. 知っておきたい「成年後見制度」の注意点とデメリット

制度を利用する前に、必ず理解しておかなければならない「負の側面」も、私たちは包み隠さずお伝えしています。

途中でやめることはできない

一度後見人が選ばれると、お母様が亡くなるか、症状が劇的に改善(完治)しない限り、途中で解任したり制度をやめたりすることはできません。

「相続手続きが終わったから後見人も終わり」とはならないのです。

報酬が発生する

専門職(司法書士など)が後見人に選ばれた場合、お母様の財産から月額2万円〜6万円程度の「報酬」が発生します。

これは家庭裁判所が決定するもので、親族が勝手に決めることはできません。

財産の使用に制限がかかる

後見人がつくと、お母様のお金を「孫の入学祝い」や「親族の旅行代」に使うことは、原則として認められなくなります。

あくまで「本人のためだけ」にお金を使うことが求められるようになります。

7. 認知症の相続問題を防ぐための「生前対策」

今回のNさんのケースでは、お父様が亡くなった後の対応となりましたが、もし事前に対策ができていれば、よりスムーズだった可能性があります。

遺言書の作成(公正証書遺言)

もしお父様が生前に「妻に全財産を相続させる」または「自宅は長女に、預金は妻に」といった公正証書遺言を遺していれば、遺産分割協議は不要でした。遺言があれば、認知症の相続人がいても、その指示通りに名義変更が進められるからです。

家族信託の活用

元気なうちに「財産の管理権」を信頼できる子供に託しておく「家族信託」という手法もあります。これを利用していれば、お父様が亡くなった後も、裁判所の介入なしに柔軟に財産を管理できたかもしれません。

8. まとめ:一人で悩まず、まずは専門家へ

 

相続人に認知症の方がいる場合、時間が経てば経つほど、状況は複雑化します。 「他の兄弟との関係が悪化してしまった」 「銀行の払い戻し期限が迫っている」 「不動産を売りたいのに売れない」

こうした事態に陥る前に、司法書士へご相談ください。私たちは法律の専門家としてだけでなく、ご家族の想いを形にするアドバイザーとして、最適な解決策をご提案します。

今回のポイントのおさらい

  • 認知症の相続人がいると、遺産分割協議は法的に成立しない。

  • 「成年後見制度」を利用することで、法的・安全に手続きを進められる。

  • 後見人はお母様の「法定相続分」を守る立場であり、裁判所の監督下に入る。

  • 遺言書があれば、こうした複雑な手続きを回避できる可能性がある。

当事務所では、成年後見の申立から、煩雑な遺産整理業務までを一括してお引き受けしております。全国対応、オンライン相談も承っておりますので、遠方にお住まいの方もご安心ください。

大切なご家族の財産と、これからの生活を守るために。まずは最初の一歩として、無料カウンセリングをご利用ください。

9. 司法書士からのメッセージ

相続は、単なる事務手続きではありません。故人の想いを引き継ぎ、残されたご家族が安心して明日を迎えられるようにするための大切な儀式です。

認知症という壁があっても、決して諦める必要はありません。成年後見制度を正しく理解し、専門家のサポートを仰ぐことで、Nさんのように円満な相続を実現することができます。私たち司法書士法人は、あなたとご家族の強い味方であり続けます。

成年後見について詳しくはこちら>>

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相続手続きサポートの費用

相続登記サポート

項目 相続登記
のみプラン
相続登記
節約プラン
相続登記
お任せプラン
初回の無料相談(90分)
不動産の事前調査(登記情報の閲覧) ※8
被相続人の出生から死亡までの戸籍収集 ※1 ×
相続人全員分の戸籍収集 ※1 ×
収集した戸籍のチェック業務 ※2
相続関係説明図(家系図)作成
遺産分割協議書作成(1通) ※7 × ×
相続登記申請(回収含む) ※2、3、4、5
不動産登記事項証明書の取得
預貯金の名義変更 ※6
(預貯金の名義変更までまるごと依頼したい方は
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× × ×
パック特別料金 35,000円~ 60,000円~ 90,000円~

※1 戸籍収集は4名までとなります。以降1名につき4,000円頂戴致します。
※2 戸籍に不足がある場合、1通につき2,000円を頂戴致します。
※3 相続登記料金は、「不動産の個数(筆数)が3以上の場合」「複数の相続が発生している場合」には、追加料金をいただきます。
※4 不動産の評価額により、料金に変更が生ずる場合がございます。
※5 不動産が多数ある場合、不動産ごとに相続人が異なる場合は、申請件数が増えますので別途加算されます。
※6 当事務所の報酬とは別に登録免許税(固定資産評価額の0.4%)が必要になります。例えば、不動産の評価額が2,000万円の場合、国への税金として2,000万円×0.4%=80,000円が別途掛かります。
※7 遺産分割協議書のみの作成ご依頼の場合の費用は、20,000円~になります。また、遺産分割協議書に不動産以外の内容を記載する場合は別途費用が発生します。
※8 司法書士が被相続人名義の不動産をご依頼いただいた市町村にて調査いたします。

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相続手続き丸ごと代行サービス(遺産整理業務)

不動産の名義変更だけでなく、預貯金などの相続に関するあらゆる手続きをまとめて代行!

遺産整理業務とは、司法書士が遺産管理人(遺産整理業務受任者)として相続人様の窓口として、相続に関する不動産、預貯金、株券、自動車、保険金、年金などのあらゆる相続手続きをお客様のご希望に応じて一括でお引き受けするサービスです。

相続財産の価額 報酬額
500万円以下 20万円
500万円を超え5000万円以下 価額の1.0%+15万円
5000万円を超え1億円以下 価額の0.8%+25万円
1億円を超え3億円以下 価額の0.6%+45万円
3億円以上 価額の0.3%+135万円

※ 上記報酬の他に、別途実費をいただきます。
※ 司法書士法施行規則第31条において、司法書士の附帯業務として相続人からの依頼に基づき、遺産管理人として遺産整理業務を業として行うことができる旨が定められております。

遺産整理業務について詳しくはこちら>>

当事務所にご依頼いただいたお客様の声

当事務所にご依頼いただいたお客様の声を一部ご紹介します。

A様(詳細はこちら

「とても良く説明していただいて理解しやすい事がうれしかった。
専門の知識が多いので事務所時間をかけてやってもらった事が特に良かったです。」

 

B様(詳細はこちら

「司法書士事務所へおとずれるのは初めてで、緊張しましたが、森先生はとてもお話がしやすく、安心してお任せできると思いました。」

 

C様(詳細はこちら

「他の司法書士事務所は料金体系があいまいなことが多いのですが、細かくプランなどがあり、分かりやすかったのでお伺いすることにしました。
森先生がとても穏やかで、安心してお願いできると感じました。やり取りもこまめに頂くことができたのでありがたかったです。
士業の方と関わることは、初めてということもあって、不安や心配が多かったのですが丁寧にご対応頂けてとても良かったです。」

相続手続きは、人によって状況も違い、進めていく中でわからないことも多く出てきます。

専門家にお任せしていただくと、相続に関わるご不安を全て解消させていただきます。

相続手続きでお悩みの方は、一度お気軽にご相談ください。

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    この記事の執筆者
    福岡中央司法書士事務所 代表 森 浩一郎
    保有資格 司法書士
    専門分野 相続・遺言・民事信託
    経歴 福岡中央司法書士事務所の代表を務める。平成11年2月に「福岡中央司法書士事務所」を開業。相続の相談件数約950件の経験から相談者の信頼も厚い。

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